高性能化が必ずしも幸せとは限らないフランス車  − プジョー508SWに乗って思うフランス車の憂鬱 −

 
私はリュック・ベッソンの“TAXI”という映画が好きです。
現実の世界ではドイツ車や日本車に対して性能で劣る自国の車(プジョー406)を持って、『でも俺たちは負けねぇー!』というフランス人的なヤセ我慢というか虚勢を張っている感じは、フランス人のリュック・ベッソンの控えめな自虐的ユーモアを感じることができます。


しかし今回“プジョー508SW”に乗って、“TAXI”のストリーの前提条件である『フランス車<ドイツ車』という性能面での公式が崩れている事を実感しました。



《試乗した“プジョー508SWグリフ”。日本ではフルサイズのワゴンという大きさになりますかね。個人的にはMAXな大きさです。》


エンジンはお馴染みのBMWの血が入った1.6Lツインスクロールターボのアレです。
ATもアイシンのトルコン6段で全く突っ込みどころがないものです。
つまり、前に紹介した“シトロエンC5”と全く同じパワートレーンで、2012年夏に導入が予定されている“シトロエンDS5”にもこれと同じモノが載ってくるというウワサです。


短時間の試乗でしたが、乗り心地は高級車らしいもので、シットリ&シッカリ感を強く感じることができます。
508という車をひと言で表現すれば、“質実剛健”というライバルであるドイツ車を表する際の常套句が最も適当でしょう。
そういうわけで正直なところ、良くも悪くもこの“プジョー508SW”から、フランシス車特有の個性を感じることはできなかったのも事実です。
比較対象として適当かは分かりませんが、車としてはVWパサート・バリアントなどといい勝負ではないかと思います。



《オトナな感じのプジョー508SWグリフの内装。車の値段からすればプラスチックの質感はもう少し頑張って欲しい感じです。》


プジョーというブランドはけして高級を狙ったものではないし、実際この508の値段もシトロエンのC5などに比べると割安感を感じられる設定になっています。
私は皮シートがニガテなので、今回乗った高級仕様のグリフではなく素の方のモデルでOKですので¥400万を切る値段となり、さらにリーズナブルであると感じることができます。
しかし、類似するサイズとパワートレーンを持つVWパサートと比べると、高いといわざるを得ません。
単純なものではないと思いますが、これだけユーロが安くなっていてそれが当分続きそうな状况なのですから、その事実を実感として反映させていただきたいものです。


ピニン・ファリーナと決別して以降のプジョーのモデルに、購買意欲を感じなくなっている人は少なくないと思います。
『オマエまだそんな事を言っているのか!』と言われても、私はあの頃のプジョーのデザインは乗用車として秀逸であったと思っています。
まぁ『昔は良かった...。』という類の話ですし、その後プジョーのビジネスは広がったのでしょうから、経営的には正しい選択であったということでしょう。


でも、やはり古いプジョー好きとしては、ナニかが欲しいんですよね。
フランス車なんですから、リュック・ベッソン的ヤセ我慢でもいいので、とにかく他とはひと味違うナニかが欲しいんです。
ちょっと優等生なんだよなぁ〜、今のプジョーは...。