私のボート感の琴線に触れた佐野造船所のウッドボート

10月発売のPerfectBOAT誌に掲載された、ニュージーランドレポートで取材をさせて頂いた、ボートビルダーの布施弘太郎氏が日本に一時帰国していました。
今回の帰国は6年ぶりとのことでしたので、日本のボート事情を布施氏に知って欲しいと思い、同氏と一緒にいくつかのビルダーやインポーターを見学させて頂きました。

[布施弘太郎氏のブログ]
http://blog.livedoor.jp/nz_boatbuilder/


最初に向かったのはウッドボートを得意とする佐野造船所。
『日本国内のビルダーを見たいというのであれば、佐野造船は外せないでしょう!見学は私が社長に頼んでおきます。』という、安田造船の武井氏のアドバイスを受けての訪問です。

[佐野造船所のHP]
http://www.sano-shipyard.co.jp/index2.htm


[安田造船所の武井氏のブログ]
http://ameblo.jp/yasuda-shipyard/





潮見駅からすぐに所にある佐野造船所。私も初めて伺いました。》



結論からいうと、布施氏も私も大大感激の佐野造船所でした。
わたくし的に何が良かったのかっていうと、佐野造船所の社長の龍太郎さんと弟さんの稔さんの考え方を聞かせて頂き、単純に『次の自分のボートはこの人たちに作って欲しい…。』とそう思うくらいに、ボート職人としてだけではなく人間としての魅力に惹かれてしまったという訳です。



《日本とNZのボート職人の集い。年代も場所も違っても思いはひとつ。話は尽きません!(左:佐野龍太郎社長 中央:布施弘太郎氏 右:佐野稔氏)》


ちょうど納艇直前の7m級のフィッシングボートが舫われていて、時間を掛けてじっくりと見学をすることができました。



《ピカピカの新艇です。一人で釣りに出るには最適なサイズですね。ウッドボートがこんなにも魅力的な物であるとは知りませんでした。》


さすがにウッドだけあって重さはFRPの比ではないないものの、それでも35ノットは出るそうです。
乗り心地に関しては未体験ですのでなんとも言えませんが、おもしろいと思ったのは佐野龍太郎さんの話の中に出ていた、『ウッドの乗り心地の良さというものは、単に剛性や重量の影響だけではなく、(FRPよりも)水との親和性が高いという感覚を持っている。』ということでした。
エンジニアリング的にどうなのかは分かりませんが、そういうこともあるのかも知れませんね。
ちょっと心をクスグル話だと感じました。



《こちらは22ftのランナバウトマホガニーの艇体は芸術品の域ですが、桟橋にぶつけたら思うと恐ろしい…。》



《感激しきりの布施弘太郎氏。今にも弟子入りを申し入れそうな勢いでした。》



《特に飾り立てることもなく、無造作に棚に置かれたスケールモデル。》


この後も龍太郎さんと稔さんからはボート作りへの思いを聞かせて頂きましたが、かなり意外であったのはお2人の前衛的な考え方で、今まで何代にも渡って培ってきた伝統を超えて、現代の最先端のトレンドもシッカリと掴まえようとしている、その姿勢には心から感銘を受けました。
私からの『IPSは?』と質問に対しての、『当然!そういうこともやりたいし、やっていかなければいけないと思っていますよ。』という回答は、まさにそういった前向きな姿勢を示すものだと思います。



ここ数年間、次のボートはフィンランドのタルガだと決めていたワタシですが、佐野造船のお2人に出会って、その考えが揺らぎ始めています。



《3年前にサウザンプトンのボートショーで見た“タルガ44IPS”(写真左)。プロダクション艇では私の理想形です。》


結局、ボートも家も同じで、完成品を見て触って乗ることができるプロダクションボートか、設計から自分の好みを反映することができるオーダーメイドか…。
長く乗るのであれば、やはり後者を選択したいと思い始めました。



《このエンブレムが付いたボートに乗ってみたい。》


今後も機会を見つけて佐野造船所さんにはお邪魔させて頂こうと思っています。